「林家染弥8時間耐久落語(前編)」 第109回 サルシカ隊がいく

投稿日: 2010年09月01日(水)07:25

photo:Jun Kano txt:Hirohisa Okuda

2010年8月29日、土曜日。
近鉄線江戸橋駅そばの津あけぼの座。
そこで・・・・
前代未聞の挑戦が行われようとしていた。

8時間耐久落語。

は?
と思ったかたも多いであろう。

でも実際にプロの落語家が果敢にもやっちゃったのである。

きっかけはもちろん飲み会の席での勢いである。
しかし、ビール3杯の勢いが、大勢の人間を動かし、そしてウルトラスーパーな記録へのアタックへと向かわせたのである。

それは、その涙と感動の8時間の完全密着ドキュメントである。

前日から三重県津市のホテルに入っていた林家染弥さんは、スタッフに続いて早々に劇場の「津あけぼの座」に入った。
持参した着物は8着。
今回、8時間で16席をやる予定なので、2席に一度着替える計算。
染弥さんはかなりの汗かきなので、手ぬぐいや肌着の替えも抜かりなく準備している。

8時間を通してのチケットはすでに完売。
開演前だというのに、かなりの人が集まりつつある。
それに気をよくしたのか、余裕の笑みを浮かべる染弥さん。

余裕のバカ笑いをしているといっても、前代未聞の8時間耐久落語である。
何が起こるかわからない。
で、ドクターを配置。

といっても、関係者の友人であるドクターに手伝いにきてもらっただけの話で、白衣を着たのは最初のみで、あとはTシャツでカキ氷の運搬などをしていたが(笑)。

あけぼの座の外には休憩所が開設され、なんと生ビールやらおつまみやらカキ氷やらぶっかけうどんが用意されていた。

お客さんへのあいさつに出てくる染弥さん。
小さい劇場ならでは、の親しみやすさだ。

落語のスタートは正午からであるが、それを前にある計画が油田あけぼの座支配人から発表された。
なんと、タナケンとM君のふたりが、染弥さんが落語をしている8時間の間、自転車に乗り続け、伊勢神宮にお参りしてそしてお土産を手にここへ再び戻ってくるというのだ。

まあこれも酒の席での思いつきである。
しかし、その様子はiPhoneを駆使して生中継され、舞台横のプロジェクター画面などで公開されるのだ。
なんだか、すごい試みになってきているのだ。

なぜ自転車で走るのか?
しかもまた廃棄物のリサイクルセンターでもらってきたゴミの自転車で。
意味がまったくわからないまま出発するタナケンとM君。

自転車隊が出発するや否や、お客さんたちは彼らのことを瞬時に忘れ去り、劇場の中へと入る。
他にもどんどんお客さんがやってきて、あっという間に満席。
熱気でむんむん。
いや、そうではなくて、エアコンの限界を超えているようだ。

そして正午ちょうど。
ついに8時間耐久落語はスタートした。

1席「手水回し」
2席「動物園」

10分の休憩を挟んで、

3席「時うどん」
4席「癪の合薬」

もうすぐ9月とは思えないような暑さ。
30度を軽くこえている。
外でずっと待機しているスタッフが暑さに耐えられない。
カキ氷がどんどん売れる。
スタッフに(笑)。

あまりの暑さと久しぶりの満席のため、笑いが止まらない油田支配人。
ちょっと前にお子さんが誕生したばかりなのに、かわいそうなことだ(笑)。

そして最初のスペシャルゲストの登場!!

三重テレビ放送の一色アナウンサー。
妖怪と釣りと孤独を愛する男である。

そしてふたりによるトークショーが繰り広げられているころ・・・・・
自転車チームの二人は・・・・

松阪の手前、三雲周辺を走っていた。
孤独な戦いと思っていた二人は、カメラマンの登場に驚き、そしてこちらの狙いに反して満面の笑み。
よってこれぐらいしか写真を使わないのだ(笑)。

5席「犬の目」
6席「看板のピン」

休憩時間の度に売店は大忙し。
こんなことなら1席ごとに休憩を入れたらよかった、もっと儲かったのに・・・・という支配人のつぶやきが聞こえたような気がするが、あれは気のせいか。

冷蔵庫でキンキンに冷やしたぶっかけうどんも人気!
もはや津あけぼの座は、劇場をやめても、うどん屋で食べていけるのだ。
ああ、よかったよかった。

まだ全然余裕の染弥さん。
チョコレートと栄養ゼリーでエネルギー補給しながら次の席へ。

7席「千両みかん」
8席「天狗裁き」

「どうなの?どうなの?染ちゃんどうなの?」

と、やってきたのは、三重テレビ報道制作部長の山田さん。
もともと三重テレビを代表するアナウンサーでもあったので知っている人も多いはずだ。

ちなみにこの人が、隊長のワタクシにテレビに出ろ、と言い、ワタクシにマゾ的喜びを教えてしまったイケナイ人である(笑)。

しゃべりのプロたちによるトークは、なかなかすごかったらしい。
が、内容は書けない(笑)。

9席「青菜」
10席「持参金」

ここへきて、控え室に戻ってきた染弥さんから笑顔が消える。
足が痛いという。
落語は、正座した状態のまま上体をはげしく動かしたりするので足への負担が大きい。
10席をこえたところで、足や膝が悲鳴をあげはじめたのだ。

わずかな休憩の間にタオルで足を冷やす。
あと、6席、時間にしておよそ3時間・・・・・。
染弥さんは乗り切ることができるのか。

後編へとつづく。